犬の分離不安症とは?原因と対処法・予防法
犬の分離不安症とは、飼い主さんの姿が見えなくなることで、極度の不安状態に陥り、さまざまな問題行動を起こしてしまうことです。今回は分離不安症になってしまう原因と、分離不安症の犬にありがちな行為・症状、対処法、予防法について詳しくお伝えします。
犬の分離不安症とは?
犬の「分離不安症」とは、飼い主さんがそばから離れるだけで、病的なほど不安になる心の病気です。
軽度であれば、飼い主さんの努力次第で改善する可能性は高いです。
分離不安に陥っている犬は、サインを出しているため、いち早く気づいて対処をしてあげることが大切です。
分離不安症で現れる行為・症状
犬が分離不安症になると、次のような行為や症状が現れます。
・飼い主さんから離れようとしない
・鳴いたり、吠えたりが続く
・ずっと震えている
・粗相をする
・家具などかじるなど物を壊す
・手足を舐め続ける、傷になるほど尻尾や手足を嚙む
・下痢、嘔吐、大量のよだれが出る
飼い主さんが外出の支度をすると、ソワソワと落ち着かなくなり、飼い主さんにくっついてまわる犬は多いでしょう。
しかし、その行為だけで分離不安症だと判断するのは難しいです。
もし、家族にお迎えしたばかりの犬は、新しい環境に慣れていないだけとも考えられます。
犬の様子をよく観察するようにしましょう。
犬がお留守番中にどのような行動をしているのか、ペットカメラで確認してみるのもいいですね。
分離不安症になる原因
犬が分離不安症になる原因はどのようなことが考えられるのでしょうか。
主な原因として挙げられる5つのことについて詳しく解説します。
生活環境の変化
同居するひとやペットが増えたり減ったりといった家族構成の変化、家の引越しやリフォームといった住環境の変化などは、分離不安症を引き起こす大きな原因として挙げられます。
また、昨今では、コロナ禍がもたらした生活環境の変化により生じた問題もあります。
コロナ禍の時期、リモートワークになった飼い主さんも多かったのではないでしょうか。
犬は大好きな飼い主さんが一日中そばにいるようになり、うれしくてたまらなかったのかもしれません。
ところがリモート期間が明けて以前の生活に戻ると、またお留守番をする生活になってしまいました。
実はこうしたことから、コロナ禍のあとに犬が分離不安になってしまったというケースは増えています。
パピー期の過ごし方
母犬から離れ、飼い主さんのもとにやってきたパピーにとって、母犬代わりでもある飼い主さんの姿が見えないことは不安に陥りやすくなります。
さらに遡ると、母犬やきょうだい犬と過ごす時間が不十分だった犬ほど、分離不安になりやすいといわれています。
生後の一定期間は、母犬から愛情を受け、きょうだい犬とじゃれ合うことで社会性を身につける大切な期間です。
飼い主さんの家族として迎えられるときまで、そのように過ごした犬は、安定した精神を持ち、後々に問題行動を起こしにくいともいわれています。
飼い主さんへの依存
犬をかまいすぎると、飼い主さんへの依存度が高まるため注意が必要です。
愛情をかけるのは大切なことですが、普段から常に飼い主さんや家族の誰かが相手をしていると、犬はひとりで過ごせなくなってしまいます。
甘えん坊の性格の犬は、飼い主さんにかまわれたい気持ちが強いですが、一日中べったりしていると分離不安を発症させる原因となります。
お留守番中にいやなことがあった
犬によっては、雷や花火などの音や地震などが苦手な子もいますよね。
過去にお留守番をしたときにそのような苦手なことが起きて、怖い体験をしたことはなかったでしょうか。
お留守番をしたらまたそのようなことが起きるのではないかと分離不安の症状が出ます。
飼い主さんがそばにいれば、怖いことや苦手なことが起きてもすぐにケアしてもらえるため、犬は飼い主さんにそばにいてほしくなります。
加齢によるもの
加齢により感覚器官、特に聴覚や視覚が衰えてくると、飼い主さんの存在を認識しにくくなるため、不安を感じやすくなる傾向があります。
しかし、シニア期に入っている犬だと認知症の疑いもあるので、心配なときは迷わず獣医師に相談をしてみてください。
分離不安の対処法
軽度の分離不安症や、原因が生活環境の変化によるものだとわかっていれば、飼い主さんの努力次第で犬に平穏な暮らしを与えてあげられる可能性があります。
犬を分離不安症にさせないための対処法をケースごとにご紹介します。
ケース(1)これから犬をお迎えしようと思っている場合
これから犬を家族としてお迎えしたいと考えているひとは、以下のことが当てはまっていないかチェックしてみてください。
・単身世帯である
・お留守番時間が長くなることが明確である
・家族内に乳幼児や介護の必要なひとがいる
・引越しなどで生活環境が変わる予定がある
これらに該当する場合は、犬をお迎えしてもよい時期なのか、犬にたくさんの愛情をかけてあげられるのかどうか、もう一度じっくりと考えてみてください。
ケース(2)お留守番に不慣れな場合
飼い主さんが出かけてしまうときに、ソワソワしながら、鳴いたり吠えたりする犬には、お留守番中に不安や寂しさを感じにくくさせる工夫をしましょう。
ラジオやテレビをつけたままにしたり、飼い主さんのにおいがするタオルなどを与えてあげたりすると落ち着いてくれる可能性はあります。
また、犬にリラックス効果があるというヒーリングミュージックをかけておくのもおすすめです。
大切なのは、「お留守番は特別なことではなく、待っていれば飼い主さんは必ず帰ってくる」ことを犬に理解してもらうことです。
外出する際に後ろ髪を引かれる飼い主さんは多いかと思いますが、さらっとした態度で出かけたほうが犬も不安や寂しさを感じにくくなります。
帰宅したときも、飼い主さんは静かな対応を心がけましょう。
冷静な態度で接すると、犬はお留守番は特別なことではないと学習し、分離不安になりにくくなるといわれています。
ケース(3)鳴き続ける・下痢・物を壊すなどの問題行動が止まらない場合
トレーニングをしても改善がみられず、下痢や嘔吐、大量のよだれが出る場合は、もしかしたら病気の疑いも考えられます。
この場合は迷わず獣医師に相談してください。
分離不安症の治療は、トレーニングによる行動療法のほかに薬物治療もあります。
獣医師が必要と判断したときは、不安な気持ちを和らげる効果があるとされる精神安定剤が処方されます。
分離不安症にさせないための予防法
犬を分離不安症にさせないための予防法をご紹介します。
まずは「飼い主さんが在宅していてもひとりで過ごさせる時間を設けること」です。
同じ空間にいてもかまわない時間をつくり、コングなどの知育玩具を与えて犬がひとり遊びができるように工夫しましょう。
一日中べったりしたり、かまいすぎたりすると、飼い主さんの姿が少し見えなくなっただけでも不安感が生まれやすくなります。
そして、「出かけるときと帰宅時は冷静に対応すること」です。
お留守番は特別なことではなく、日常的なことだと理解してもらうことが大切です。
まとめ
犬の分離不安症になる原因には、次の5つのことが挙げられます。
・生活環境の変化
・パピー期の過ごし方
・飼い主さんへの依存
・過去にお留守番中こわい思いをした
・加齢によるもの
軽度であれば飼い主さんの努力次第で軽減することが期待できます。
しかし、トレーニングがうまくいかなかったり、症状が進んでしまったりしているのではないかと気持ちが沈んでしまう飼い主さんは少なくありません。
飼い主さんはひとりで抱え込まず、獣医師やドッグトレーナーを頼るようにしてくださいね。